管理職個人も訴えられる?

大手居酒屋チェーン運営会社の大庄が
入社4カ月の新入社員の過労死によって
会社ばかりか、取締役にも賠償命令が出たのは
皆様のご記憶にも、新しいところだと思います。
(大阪高裁 平成23年5月25日)

第1審(京都地裁)で
会社と取締役に賠償命令が下され、
会社と取締役が控訴したのですが、
やはり第2審(大阪高裁)でも、同様の判決でした。

会社に対しては、不法行為
または、債務不履行((安全配慮義務)
4名の取締役らに対しては、上記の不法行為の他に、
会社法違反も加えられたということです。
(第429条違反=役員の第三者に対する損害賠償)

これは、私がいつも口を酸っぱくして
人事部門の方に申し上げている
労働契約法第5条の問題なんですね。

この会社は、大きな労働安全衛生法違反歯ありませんでした。
ですから、行政法令さえ守っていれば大丈夫、
という判断は、見事に覆されました。
長時間労働したら、医者に見せればいい。
これは大きな間違いです。

企業は、従業員と労働契約を結ぶ際、
従業員が、安全かつ幸せに、人間らしい生活を営めるよう、
配慮する必要がある、ということを明文化した法律です。

幸せとは、自分の時間がある、ということです。
1日12時間も会社にいたらどうでしょう。
通勤時間を引けば、ほとんど自分の時間がない、
人間らしい生活ができない、とみなされます。
その状況の中で、健康を害し、果ては死んでしまったら・・・・。
これはもう、会社や経営者の責任は重大ですね。

居酒屋の事例は、長時間労働を抑制する働き、
つまり業務を見直したり、
早帰りデーを設けるなど、
そうした企業の安全配慮体制が何もなかったこと、
会社(取締役)が、長時間労働を黙認していたこと、
それらが、今回の判決につながった例です。

厚労省の外郭団体である
『脳・心臓疾患の労災認定基準に関する専門検討会』では、
それらの疾患と、長時間労働の因果関係の蓋然性を
認めているのですから、
多数の社員に長時間労働させれば、
誰かが、過労死するのは予見できたであろう、というわけです。

会社が訴えられるのも困りますが、
取締役や上司も不法行為/債務不履行などで
訴えられる、ということを再認識しましょう。

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