前回は、企業が労災事故を起こした場合、
3つの責任が考えられる、と書きました。
今日は、その2つ目、「民事責任」について見ていきますね。
民事責任というのは、刑事責任と違い、
他人の権利を侵害した者が、
被害者に対して損害を賠償する、という意味合いを持ちます。
ということは、労災事故における企業の民事責任と言えば、
すぐに、安全配慮義務違反による賠償か!と考えますが、
その前に一つあるんです。
それは、災害補償の責任です。
労働基準法により、被用者(働く人)が業務上の傷病を負った場合、
使用者(企業)は、補償する責任があります。
しかも、この責任は「無過失責任」といって、
企業側に、過失があっても無くても、補償しなくてはならないのです。
しかし、資金力のない企業は、払えない可能性もありますよね。
そこで、被用者を救済するために作られたのが、
労災保険なのです。
どのような使用者も、たとえ一人しか雇用していなくても、
必ず加入しなくてはならないのが、労災保険。
それは、災害補償が無過失責任だからなのです。
企業には、まずこの責任があることを認識しましょう。
次の民事責任としては、そうです、損害賠償責任があります。
労災では、休業補償や治療代が支払われますが、
全額ではありませんし、
事故によって負った心の傷を埋める慰謝料などは
支払い対象にはなりません。
また、定年まで健康で働けたのであれば、
受け取れたはずの給与の合計など、遺失利益も出ません。
これらの補償は、企業側に安全配慮義務違反という債務不履行があれば、
厳しく追及されることになります。
ここ10年来、2億円近い賠償金が報じられるなど、
被用者からの賠償請求の勢いは、増すばかりです。
次回は、3つ目の責任、「社会的責任」について、お話ししましょう。