前回は、企業が労災事故を起こした場合、
3つの責任が考えられる、と書きました。
今日は、その一つ目、「刑事責任」について見ていきますね。
これは、簡単に言えば、労働安全衛生法を守り、
安全に労働者を働かせるために、注意を払う義務のことです。
労働安全衛生法は、労災を防止し
労働者を安全に働かせるよう
企業に義務付けている法律ですが、
労災発生時には、それらのことが守られていたかどうかが
問われることとなるのです。
その他、刑法の業務上過失致死、過失致傷に問われることもあります。
これは主に、建設現場や、製造現場などにおいて、
重大な死亡事故など起こった場合ですが、
事業主が注意を怠ったため、となれば、
労働安全衛生法違反とともに、
業務上過失致死、過失致傷罪に問われることとなります。
興味深いのは、
労働基準法と労働安全衛生法における、責任の主体の違いです。
労働基準法でいう「使用者」と違い、
労働安全衛生法における「事業者」は、
「事業経営の利益の帰属主体そのもの」と
労働基準局長が通達を出しています。
労基法の「使用者」は、工場長だったり、課長さんだったり、
会社経営のために部下に命令を出す人を含みます。
しかし、労働安全衛生法でいう使用者は、
ズバリ法人そのもののことですから、
実際に罰を受けるのは(法人は人間ではありませんので)
経営者その人、というわけなのです。
たまに、新聞で、労働安全衛生法違法で役員が書類送検、とか
出てますよね。
あれです。
次回は、2つ目の責任、「民事責任」について、お話ししましょう。