私がこの問題を取り扱い始めて、15年近く経とうとしています。
(思えば遠くに来たもんだ)
従業員のうつ自殺を会社のせいにされて、ネットで叩かれる社長や、
多額の賠償命令が下って支払うことができず、倒産に追い込まれた社長が
チラホラ出てきたころです。
過労やパワハラで、死にまで追い込まれる。
これは、尋常なことではありません。
その根源を断つのが「働き方改革」のはずですが、
労働者からのハラスメント相談件数は、年々増加するばかり・・・。
それに伴う精神疾患が、労働災害と認定されるかどうかは
厚労省が定める基準を満たすかどうかで決まります。
その基準は「心理的負荷評価表」に書いてあります。
そこには、具体的な出来事がたくさん例示されており、
それぞれに、心理的負荷が「強・中・弱」で示されています。
その表が、ことし改正されたのをご存じでしょうか。
主な改正ポイントは下記の通り。
▲「具体的出来事」等に「パワーハラスメント」を追加
・「出来事の類型」に、「パワーハラスメント」を追加
・「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を
「具体的出来事」に追加
▲評価対象のうち「パワーハラスメント」に当たらない暴行やいじめ等について文言修正
・「具体的出来事」の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の名称を
「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」に修正
・パワーハラスメントに該当しない優越性のない同僚間の暴行やいじめ、嫌がらせなどを
評価する項目として位置づける
要約すると、パワハラが今までよりも、さらに明確化されたということです。
今年6月から(中小企業は2020年4月から)企業に義務化された
防止法と合わせて、こちらも改正されたと解説されています。
企業は、益々パワハラに気をつけねば、人材も確保できず
その存続さえ危ぶまれる時代となりました。
セクハラ、マタハラ、モラハラ、SOGIハラなども防止の対象ですが、
ほとんどのハラスメントは、パワーがある人が無い人(もしくは弱い人)に
行うものですから、職場のハラスメントの90%は
広い意味で、パワハラといってもいいかもしれません。
例えば、職場の女性にエッチな発言を繰り返す男性。
果たして、社長夫人にも、同じことが言えるでしょうか?
例えば、おとなしい性格の新入社員の男性に
「ちょっとー、ホモじゃないの、あんた!」などとからかう女性。
果たして、おとなしい性格の上司にも、同じことが言えるでしょうか?
これを見てもわかる通り、多くのハラスメントには、
なんらかの優位性(パワー)が潜んでいます。
年上だから、上司だから、先輩だから、男だから、
古くから居るから、本社勤務だから、正社員だから、マジョリティだから、などなど・・・。
パワハラというと、部下を怒鳴りつける男性上司ばかり連想されますが、
ネチネチ型も、無視型も、からかい型も
すべて「相手がやり返してこない」という
予測の下に繰り返されていることが、ほとんどです。
その証拠に、言い返してきそうな気の強い部下には、
ほとんど怒鳴ったりしないのが、パワハラ上司です。
ものすごく卑怯なやり方で、断固として許してはなりません。
それを、成績優秀だからとか、役員だから、などと懲戒しないでいれば、
優秀な人材からどんどん流出していくのは、自明の理です。
そんなイヤな場所にいなくても、優秀な人材は、引く手あまただからです。
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私は、2段階で、この問題を改善してきました。
1.対症療法
NGルールを明確にして、周知+相談体制確立。
2.根治療法
これは、風土改革を指します。
具体的には、業務改善+DX推進や
チームビルディングを支援したりします。
1ばかり、2ばかりでは効きません。
どちらに重きを置くかは、場を見て決めます。
2は大切ですが、もし、社内でハラスメントが報告されているならば、
すぐに1を!
ハインリッヒの法則をご存じだと思いますが、
ちょっとした「気になること」を放っておくと、
ある日大事件になったりします。
ハラスメント問題があるのに、根治療法から始めるのは、
おなかが痛い!と言ってクリニックに来た人に、
健康的な生活が大事ですよ、などと勧めるようなものです。
ハラスメントは、実際報告された件数の、
およそ10倍はあると思っていいでしょう。
(これは、長年のコンサルタントとしての経験による勘ですけど)
1の対症療法が載っています。
半年で症状を落ち着かせたい企業は、こちらをご覧ください。
それから、落ち着いて2に取り組みましょう。
1は半年足らずで済みますが、2は長丁場になります。