ある企業で、こんなことがありました。
30歳くらいの優秀な女性を採用して、営業部に配属。
3か月ほどたった頃、退職したいと突然人事部長に連絡がありました。
人事部長は、採用面接の際に会ったきり、
彼女のことはすっかり忘れていたのですが、
元気に働いていると、営業部長から聞いていたので、
「なぜ、突然に!」と驚きました。
しかし、彼女にとっては突然のことではなかったようです。
それはそうですよね。
何らかの原因があり、徐々に職場がイヤになるのが普通です。
彼女に、辞めたいと思わせたのは・・・
上司である営業課長の乱暴な言動でした。
彼は、その輝かしい成績で課長になり、
大変豪快な性格で、部下から慕われている部分もありました。
その一方で、男女問わず下ネタを言ったり、
体をバシっと叩いたり、
機嫌が悪ければ、大声で怒鳴ったり、という一面も。
周囲も部長も、それは認識していましたが、
とくに注意もされず・・・
さて、どうしたら彼女の退職を防ぐことができたか?
ということについて、考えてみましょう。
新入社員は、不必要なほど大事にするのに、
なぜか中途入社の人に対しては、ほったらかし、という会社が目立ちます。
もう、子供じゃないんだから、経験もあるんだから、
特別なケアをしなくても、大丈夫でしょう、というわけでしょうか。
皆さん、ご存じでしょうか。
中途入社は、異動者と同じくらいメンタル不調のリスクが高いのです。
中途入社の人は、その会社の流儀もルールも解らないまま、
即戦力として期待され、したい質問もできないまま、結果を求められます。
今回の事例のような上司では、そもそも相談できないでしょうけれど、
優しい人だとしても、直属の上司=評価者には、
「これは、なぜこうなんですか?」とか、
「解りません、できません、つらいです」等は言いづらいもの。
そこで、人事部の出番です。
中途入社の人向けの専用プログラムを用意して、
一人の脱落者も出さないように、気を配りましょう。
プログラムには、概ね下記の項目が求められます。
1.オンボーディングのためのガイダンス
(社内手続き、その他について、細かいことでも、
一般の社員なら当然知っているようなことでも)
2.人事部が定期的な面談(2週間に1度、電話でもOK)
これを、2か月程度続ける。
3.ストレスチェックを実施(入社時、1か月目、2か月目など)
3は、2のついでに行うとよいでしょう。
そして、少しでも様子がおかしい場合には、
カウンセリングを勧めるなど、セーフティネットを準備しておきます。
もちろん、これは従業員すべてが使えるものとして。
社内に何でも聞けて、相談に乗ってくれる味方がいる!
そう思うだけで、その人は本来の実力を発揮することができるでしょう。
いま注目の、「心理的安全性」ですね。
働く人の心理的安全性を高めることが、
企業の安全配慮義務を果たすことにもつながります。