うつ病で休職し、結局退職することになった社員から「労災申請したい」と言われたら、あなたはどうしますか?
・何が何でも思いとどまってもらうべく説得する。
・役員をひっぱり出してきて、労災申請を思いとどまるよう話してもらう。
・健保の傷病手当金が出るからいいじゃないか、と取りなす。
・社長に知られたら、どんなに怒られるかと想像して怖くなる。
・一緒に労基署に行って、労災申請の手続きを手伝ってあげる。
まあ、労災申請するといわれて、嬉しい顔をする企業はありませんよね。次年度の保険料に反映されてしまう、という話だし、労基署にも目をつけられかねない。
しかし、ちょっと待ってください。ここで労災保険に関する知識のおさらい。下記の項目で、間違っているものはどれでしょうか?
・労災は会社の判断で申請するものである
・パート労働者は労災保険の対象外である
・労災の審査は本人の申請が無くてもスタートする
・労災保険が適用になると、次年度の保険料がどの業種でも上がる
・健保組合からの傷病手当を申請した場合は、労災の申請をしなくてもよい
答えは・・・すべて×です。そう、ここでのポイントは、労災申請は会社が決めることではない、ということ。基本的に、本人が申請したいと言えば申請できるものです。そして、労災かどうかの判定は、会社や本人が行うのではなく労基署が行います。よく、労災認定を求めて本人が提訴、とあるのは国(労基署)を提訴しているのであり、会社ではありません。
では次に、労災の申請をする企業のメリットについて考えます。メリットとしては、労使トラブルになりにくい、ということです。あなたに協力しますよ、という姿勢を従業員に見せることによってその後の展開がスムーズになります。また、別のメリットとしては、労災と認められれば加入している労災上乗せ保険や使用者賠償責任保険が使えることです。この保険に加入している企業は少なくないと思いますが労災認定が前提です。裁判や調停で、損害賠償金(和解金)を払うことになっても、労災認定されていなければ保険金は使えないのです。
それでは労災申請を拒むことによるリスクは・・・?企業に話しても無駄だと従業員が判断すると個人で労基署に行く可能性が高まります。もしくは最近激増しているユニオンなどの団体に相談に。すると、労基署では『労災隠しでは?』という色眼鏡で最初から面談にくるので、これはよろしくありません。
もちろん労災認定された場合のデメリットもあります。モメて新聞沙汰になればブランドの失墜、信用力低下、ということも考えられます。業種や制度によっては次年度の保険料がアップします。(メリット制を申請している企業に限る。このメルマガをご購読のみなさんの企業ではほとんど当てはまらないと思われますが)これについても、『モメる』からまずいのであって交渉がスムーズにいけば問題ないのです。
万が一のために保険に加入しているのです。労災を使うことは企業の恥と思わず、
従業員のために力を尽くしてあげましょう。問題は、賠償責任を問われるような働かせ方をしていなかったか、という点です。