企業の人事部門の方に聞くと、定期健康診断の受診率100%の企業は本当に少ないです。企業側の姿勢として100%受診を目指していないのはもってのほかですが、
なんだかんだ言って受診しようとしない社員への対応は、頭の痛いところですね。
まず、健康診断の実施義務ですが、労働安全衛生法に、事業者は使用する従業員に対して、医師による健康診断を実施しなければならないと規定されています。
なお、この義務に違反した事業者(事業者のみ)には、50万円以下の罰金が課せられることになっています。
次に健康診断の受診義務についてですが、労働安全衛生法は労働者に対しても、事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」と規定しています。(事業者が行う健康診断でなくてもよい)つまり、健康管理は、労働者の義務でもあるんですよね。なお、事業者の健康診断実施義務と異なり、労働者の健康診断受診義務に対しては罰則は規定されていません。
よって、事業者は健康診断を受けない従業員に対して、業務命令として健康診断を受けるように命じても、なんら問題ありません。しかしながら、嫌がる従業員の首に縄を付けるわけにはいかないし・・。かといって、それを野放しにしておいて業務上の傷病にかかれば会社が不利な立場に立たされるのは、目に見えています。
事業者には、安全配慮義務が課されています。そして、それが初めてこの5月から明文化されたことは以前このメルマガでも書きました。従って、健康診断を受診しない従業員をそのまま放置して、もし潜んでいた病気が原因となり労働災害が発生した場合には、相当の賠償請求される可能性があります。
また、健康診断の事後措置を怠ったことにより、気を付けるべきポイントを見逃していて、労働者が事故に会ったりした場合、も同じです。たとえば、血圧降下剤を飲んでいて眠気を催すから、この人に運転させてはいけない、という医師の所見をしらずに、運転させていた。その結果、その人が居眠り運転で亡くなった、等という場合、安全配慮義務違反に問われる可能性が大きいと思います。
事業者のリスク回避するためには、健康診断受診の義務を必ず就業規則(または個別の労働契約)に記すべきでしょう。それでも従わない従業員には、書面で(ここが肝心)何度も受診を促し、場合によっては懲戒規程を適用します。これらをすべて書面で残すことが肝要です。