メンタルヘルスケア、最低どこまでやればいいのか?

相談の中でも最も多いのが、会社としてどこまでやればいいのか=いくらかければいいのか?というご質問です。言い換えれば、『最低限のレベルを教えてくれ』ということでしょう。

これは単純です。労働安全衛生法や労働契約法にきちんと準拠するレベルに持っていくこと。細かく見ていくと、これができていない企業が多いですね。産業医や衛生委員会の問題、長時間残業者の医師面談の問題、安全配慮義務の問題・・・。いずれもちょっとした違反や手抜きが目立ちます。罰則が軽いからいい、労基署が来ないからいい、そういった軽い気持ちで済ませていたことが、企業に大きなダメージを与える時代となりました。経営理念などに『誠実・正直』とうたっている企業でも、案外こういうところで小さなルール違反をしていたりするものです。有事の際(従業員の自殺など)に法令順守ができていなければ、それだけで一発アウトです。そして有事は、音も立てずに突然やってくるのです。

法にきちんと準拠するとは、有事(社員の自殺や、うつ病によって退職に追い込まれるなど)が起こり、社員や家族から訴えられた場合に不利にならないレベルに持っていくことということです。労災認定の裁判は、労働者側と国との争いになりますが、民事裁判(逸失利益や慰謝料などの損害賠償請求)になりますと、企業が遺族・家族に訴えられるという形になります。その場合、企業が普段どのくらいメンタルヘルスケアに時間とお金を使っていたのかが問われることとなります。全く何の予防もせず、社員に心の病に関する知識も与えず、相談窓口も用意せず(つまり法律に準拠していない状態)・・・となれば、多くの必ず過失を課されますし、その反対に手厚い体制があればあるほど過失相殺で有利となります。大手広告代理店が起こした平成3年の事件以来、労災とは別の民事訴訟の恐ろしさを企業は身をもって知ったでしょう。

裁判で、この企業は十分やることをやっていた、と判断される基準としては、法令の順守は大前提として、その他、従業員一人当たり年間1時間以上のメンタル教育、それに加えて従業員が困ったとき、いつでも気兼ねなく相談できる窓口が有ったかどうか、それが周知されていたかどうか、このあたりが問われるということです。上記をもれなく行った場合の予算をさっそくはじいてみてください。それが御社のメンタルケアに掛けるべき予算です!

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