獨協医科大の高橋都先生(内科医)の研究成果発表会がありました。
彼女は、がん患者が働くということについて
研究を続けておられます。
がん患者のことを、<がんサバイバー>と呼ぶのを
ご存知でしたか?
患者と呼ぶより、サバイバーの方が、
がんと共生する、というイメージが強いですね。
がんサバイバーとなった人は、
夫として、妻として、父として、母として、
あるいは子供として、恋人として、
などいろいろな役割を演じなくてはならないわけですが、
その中に、当然職場の一員として、というのが
加わる人は多いわけです。
そこに焦点を当てた研究で、
本人、家族、社内保健スタッフ(産業医や保健師)、
企業の人事労務部門、それぞれが、どう動き、
どう協力していくべきか、という研究です。
当然、講演は素晴らしいものでしたが、
私は途中から、
<がんと就労>というテーマを
<うつと就労>という言葉に置き換えても、
まったく同じだな、という感想を抱きました。
ちなみに内容を少しだけ紹介すると・・・
・日本人の多くは、がんを不治の病と決めつけている
・毎年あらたにがんと診断される人は20万人を超えている
・全てのがんで言えば、5年生存率は6割近いのに、死ぬ病気というイメージが強い
・今やがんは、死に直結する病ではなく、長く付き合う慢性病
・がんになった後の暮らしを考えるべき
・がんサバイバーが直面する問題は、経済問題と職場の制度の不備
・企業の悩みは、病状把握の困難さ
・がんの既往歴を隠して就職する人が多い
・がん治療のため、退職する人も、いまだに多い
・サバイバーを支援すると、企業もメリットが多い
・有能な社員の活用、他の従業員へのメッセージ(病気でも捨てられない)
・本人を取り巻く様々な立場の人(家族、企業、医療者、地域)の連携が大切
などなど。
<がん>を<うつ>に読み替えても
通じる部分が、少なくないと思いませんか?
高橋ドクターは、多くの方のインタビュー結果も
見せてくださいましたが、
人事労務の方々の声として、
・病人にどこまで仕事を任せていいか。
・復職してきたら、どう配慮すればいいのか。
・どんな社内規定が必要か。
・主治医や産業医と、どう連携を取ればいいのか。
・緊急対応マニュアルがほしい。
このような声が多かったそうです。
これもまた、メンタル対策と共通点が多いようです。
研究の成果はメディアでも多数取り上げられ、
学会でも発表されています。
この研究グループでは、
企業の人事労務担当者向けのガイドブックも
作成されています。
こちらからPDFの形でダウンロードできますので
ご興味のある方は、アクセスしてみてくださいね。
http://www.cancer-shigoto.com/index.html#kigyoumuke
ほかに、産業医向け、看護職向けなどのマニュアルも
充実しています。
がんだから、うつだから、と
キャリアをあきらめることなく、
本人と会社が歩み寄れる範囲で、就労を継続させることが出来たら・・
素晴らしいと思います。